衝撃的漫画「うみべの女の子」浅野いにお

うみべの女の子 第1巻表紙

うみべの女の子 著者:浅野 いにお  2021年3月 第1刷発行 全2巻
「マンガ・エロティクス・エフ」(太田出版)で2009年~2013年まで連載
2021年に映画化(R15+指定)

あらすじ

どこにでもありそうな海辺の田舎町。
どちらかというとモテそうな可愛い顔をしている佐藤小梅は、イケメンと言うだけで簡単にチャラい男にもホレてしまう中学2年生の女の子。

マンガ「うみべの女の子」佐藤小梅
小柄でおとなしそうな小梅

一方、磯辺恵介はモテなさそうなタイプの男の子。過去に小梅に告白し、振られたことがある。

見た目的にはパッとしない磯辺

小梅はあこがれの三崎先輩にこっぴどく振られたことの腹いせに、磯辺と性行為をする。
磯辺の家は父子家庭、さらに父親は帰宅することが少ないこともあり、2人は興味本位からありとあらゆるタイプの行為を重ねていくー。

その性描写がリアルですごすぎて、芸術作品ー。
昔々「まいっちんぐマチコ先生」という漫画ですら「いやらしい」と思っていたが、このレベルに行きつくともう「いやらしい」を通り越してしまう。

最初こそ初々しい小梅だがー
休み時間に呼び出して学校のトレイでも
どんどん積極的になる小梅・・
抱き合う中学生(この時は中3)

性に開花していく二人だが、磯辺は実は大きな闇を抱えていた。
磯辺には兄がいた。性格がやさしく、だが行動が遅かった兄は、この海辺の町に越してきて、いじめに会い、自殺したのだー。その張本人は小梅が想いをよせていた三崎先輩らだった。
兄を救えなかったという思いから、磯辺はずっと兄の亡霊につきまとわれていた。

海に兄が現れるー

始めは「俺とつきあうようになる可能性はあるかな?」「いや、それはない。」「キスはいや」と、小梅が優先権を握る関係だったのだが、小梅は徐々に磯辺に興味を持ち始め、やがてその関係は逆転していく。
そんな中、小梅は磯辺の部屋から適当にもらったSDカードに可愛い女の子が何枚も映っているのを発見、「この女の子は誰だ?」と、やきもちを焼く。
だが、そのSDカードはたまたま磯辺が砂浜で拾ったもの、写っている女の子も当然知らない子だが、とても美人なその子に一目惚れし、SDカードを手元に戻し、「うみべの女の子」と呼び、デスクトップ画面にするなどしていた。

そのことが面白くなかった小梅は、いつものように磯辺の部屋で行為をしたあと、さほど悪気はなく磯辺のパソコンから勝手に画像ファイルを削除する。
が、そのことが磯辺を豹変させてしまう。

その日をきっかけに磯辺から連絡はとだえ、会ったところで以前の磯辺ではなかった。

自分の領域に立ち入られ、豹変する磯辺
小梅と磯辺の立場が完全に逆転する

どうにかしたい小梅は、体を武器に強制突撃をする。

磯辺の家に強制突入する小梅

始めこそ拒否する磯辺だが、「会いたかった」という小梅の体攻撃に結局はまたセックスをしたうえ、お泊りもする。

「何が悲しいって、きっと佐藤は高校行ったら今日のことなんてしれっと忘れて、それなりの男を普通に好きになってまるで初めてみたいなセックスするんだ。」
「お前がちょっとその気になれば、男は勃起もするし股開けば大抵は入れてもらえるし、束の間の孤独程度なら楽勝で埋められるイージーモードの人生じゃないか」
中学3年生でこんなことを言ってしまう磯辺、奥が深い。

そして二人は眠りに落ちるー。

かわいい!!

翌日、家に帰っていく小梅。
磯辺は独り言をつぶやく。「どうせひきとめたって、お前は家に帰るんだろ。無駄に期待させるなよ・・・鬱陶しい。・・お前は・・何も知らなくていいんだよ。」

磯辺は機会を狙って、ある夜、兄をいじめた張本人たちをとうとう襲撃したー。
雨の中「俺は勝った・・勝ったんだ・・」といいながら、涙を流す磯辺。

小梅は再び磯辺と連絡の取れない日々が続くー。
小梅は間もなく開催される文化祭の日に、磯辺に渡す予定でプレゼントと磯辺への想いを綴った手紙を用意していた。
だが、嵐の中で迎えた文化祭に磯辺は来なかった。
家に突撃したが不在。「ごめん」という付箋だけがパソコンに貼られていた。
嵐の中、海辺を探し回ったが、結局見つからなかった。

その時磯辺はー
襲撃後も兄の呪縛から解き放たれず、心ここにあらずで嵐の中の喫茶店にいた。
その店を出たとき、なんとSDカードに写っていた「うみべの女の子」が雨でぬれたスカートを絞っていたのだったー。

気になるラストシーン

「海辺の女の子」の実物に会った磯辺と、学校で遭遇する小梅。磯辺は「その子と同じ高校に行くんだ!」と目を輝かせています。髪も切ってさっぱりしちゃいました。
そんな磯辺に「わたしとつきあってください!」と一生懸命気持ちを伝える小梅でしたが、玉砕します。

切ない失恋シーンです

最後に「キスしてほしい」とお願いしますが、それすら断られます。
「勉強頑張ってね!」と立ち去ってしまう磯辺に泣き崩れる小梅。

磯辺はその帰り道、ひそかに涙を流しつつ(小梅のことわかりきちゃっているから好きな気持ちもあるけどキスしてあげなかったのかなあ)・・・・
横目に兄の亡霊を見つつ・・・
警察から「ちょっとお話聞かせてもらっていいかな?」と話しかけられ、「はい」と素直に応じます。

ラストの回は、小梅高校1年生。
磯辺がある日語っていたように、普通の男と普通のつきあいをしているのでした。

あーうん、そうゆうのちょっと恥ずかしい(笑)

最後の最後は海辺で、かつて小梅に思いを寄せいていた中学校の同級生男子とたまたま会って、なんてことない会話をするシーン。
小梅はまだ冷たい海に足を濡らし「うみ!」と笑顔で手を広げるのでした。
まさに「うみべの女の子」。

映画版「うみべの女の子」

この作品、私は漫画よりも先にAmazonプライムの映画で知りました。
ありえない性描写と小梅の切ない失恋シーンに衝撃を覚え、繰り返し視聴、で、原作が漫画だと知って読んでみたのですが・・・・まさかここまでそっくりだとは・・
漫画を台本に映画を作ったかのようにどのシーンもそっくりそのままです。
この嵐のシーンもー

看板とんでいくの、わかるわかる!
文化祭でチョコバナナ屋・おそろいのTシャツもわかる!

おそらく大半の方は漫画→映画の流れで観られたと思いますが、そちらの皆様も「ま・・まさかこの漫画をここまで再現するとは!!!」と衝撃を受けたと思われます。

映画と漫画の違うところは、「うみべの女の子」の画像を勝手に消去し、豹変した磯辺の部屋に体当たりで突撃して行くシーン、映画の方が拒否られ方がエグいです。小梅は服を脱ぎ裸になって磯辺に抱きつくも投げ飛ばされたりします。

それから「イケメン」設定の三崎先輩、漫画の方、かっこよくない・・。

歌「風をあつめて」とは

磯辺の家のパソコンから流れていた「はっぴいえんど」の「風をあつめて」という曲、文化祭の時にプレゼントしようと小梅が親に頼んでアルバムを買った。
文化祭の日、小梅のリクエストで流れた学校放送のこの曲をバックに、映画でも漫画でも小梅が嵐の中磯辺を探します。
私は映画から入ったので、挿入歌があってもおかしくなかったが、漫画にも使われていたので少し驚いた。よっぽどこの曲が好きなのか、もしくはこの曲をイメージして漫画が作られたのかー。

「はっぴいえんど」は1969年から活動している日本のロックバンドとのこと。
「風をあつめて」は代表曲で、2003年のアメリカ映画「ロスト・イン・トランスレーション」、2009年の日本映画「おと・な・り」でも取り上げられたらしい。

作者「浅野いにお」について

1980年生まれ、茨城県出身で、ウィキペディアに写真も掲載されている。
こんなにうまい絵が描けるなんて奇才である。
ペンネームの「いにお」が印象的だが、これは手元にあった保険証の記号からとったものだとか(笑)。
デビューの際に「超生命」というペンネームにしようとしたが、編集者にそれでいいのかと問われ、考え直して「いにを」にしたというー。
適当だけど、雰囲気あるし「超生命」にしなくて良かったと思う。
「うみべの女の子」と言う漫画の前に「ソラニン」という漫画も映画化されてます。

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